極上の他人

突然大きな声をあげた亜実さんの声はそのまま途切れ、スマホを耳に当てたままおろおろしていると、突然聞こえてきたのは

『ふみちゃん？俺、千早』

「え？千早、くん……？」

息が上がったような声で私の名前を口にする千早くんだ。

『私のスマホ返しなさいよー』と亜実さんが話している声も聞こえるけれど、どうやら亜実さんからスマホを取り上げた千早くんが、私と話しているようだ。

『体、大丈夫なのか？』

どこか低い声。

電波越しだからだろうか、少し怖い。

「うん。大丈夫……だけど」

『で？俺がどうして今機嫌が悪いかわかってるよな？』

「えっと、今日コンパを欠席したから？もしかして男女の人数が合わなくて千早くんあぶれちゃった、なんてことはないよね。一番人気だもん」

はははっと、から笑い。

千早くんのこんなに不機嫌な声は初めてで、どう答えていいのかわからない。

お店で会う時には優しい声と表情で私を和ませてくれるのに、まるで今の声は別人のようで少し怖い。

ようやく下がり始めた熱が、再び上昇しそうだ。