極上の他人


『昨日のあれ、何?どうして突然帰ったんだ?』

あ……。

そう言えば、昨日千早くんと輝さんに何も言わずに帰ってしまった。

カウンターにお金を残して帰るという、失礼なこともしたんだった。

「ごめんなさい。あの、お金、もう少し多めに置いておけば良かった……?」

小さな声で、とりあえず聞いてみた。

『バカか?』

「ば、バカ?」

『ああ。金なんてどうでもいいんだよ。結局何も食べずに帰ったし、バーボン飲むって言ってたのにそれすら無視して帰ったのはどういう事だ?』

「あ、あの、それは」

『まあ、結局輝さんだろ?輝さんがふみちゃんを構わないから拗ねて帰ったってとこだろ?』

厳しい言葉が胸に痛い。

確かに輝さんが原因で私は帰ったけれど。

それは拗ねたわけではなくて、自分の想いをどう消化していいのかわからなくて帰ったっていうのが近いんだけど。

その気持ちを、千早くんに言っていいものかどうか、わからない。

きっと、私の輝さんへの恋心は千早くんにはお見通しで、あまりにも幼稚な私の行動が歯がゆいに違いない。

「千早くん、ごめんね」

『……認めたわけ?輝さんのこと』

探るような声に、心は震える。


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