極上の他人


小さな頃から慣れているから、大丈夫。

どんなに寂しくて悲しくて苦しくても、しばらくその痛みを体全体で受け止めて我慢すれば、きっと全て通り過ぎていく。

両親に見捨てられてからの長さに比例して、私は強くなったから、大丈夫、大丈夫。

心で何度もそう呟いて、自分を励ますことにも慣れているから、大丈夫だ。

「……ふみちゃん、指の色が変わってる」

その声と共に、私の手を包み込んだ輝さんの体温を感じて、はっと目を開けた。

「力入れ過ぎ」

呆れたような声。

輝さんは私の手を温かく包んだかと思うと、一本一本、指をほどいていく。

「細くて綺麗な指なのに、色が変わるほど握りしめるなよ」

「輝さん……」

「ん?そんなに気分が悪いのか?体を起こすより、寝ている方が楽か?」

私の両手の指を全てほどいて、一本ずつ触れる。

少しずつ赤みが戻ってくる指先に、血が流れていくのを感じる。

その手を輝さんに預けたまま、私はゆっくりと手を動かしてみる。

握りしめて開いて、そして握りしめてまた開いて。

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