極上の他人
「当たり前だよな、もう高校生でも大学生でもない、仕事も持っている一人前の大人なんだから、指輪だって当然」
「輝さん……?」
何だかさっきから指輪にこだわっているようだけど、その理由がわからず首を傾げた。
高校、大学なんて言葉が出るのも不可解で、私はどう言葉を続ければいいんだろう。
輝さんは、私の手をぎゅっと包み込んだまま、ふっと息を吐いた。
私を見つめる視線が強くてそらせない。
そして、その顔をぐっと私に近づけた。
何かを思い出しているような瞳の中には、戸惑っている私の顔が映っていて、輝さんに比べてなんて子供なんだろうかと思う。
余裕に溢れ、特に動揺している様子が見えない輝さんと、受入れキャパいっぱいいっぱいの私とを比べれば、その差は歴然としている。
やっぱり、私が女性として輝さんに見てもらいたいだなんて、高望みだとしか思えない。
何をどう思っても、落ち込むばかりの自分に嫌気もさして、強くなりたいと思いながら生きているのに、弱い自分ばかりが顔を出す。
「これって、小さい頃にできた傷だよな……?」
ふと変わった声音に意識は戻される。