極上の他人
「史郁、ふみか」
暴れ続ける私を強い力で抱きしめながら、私の苦しさと同じだけの苦しみを感じているような声音で輝さんは何度も私の名前を呼んだ。
「史郁、お前は、自分の力で幸せになるために生まれてきたんだ」
「そんなの、無理。誰からも愛されてないし望まれていないのに、無理。幸せになんてなれるわけない」
「愛されていないなんて、言うな。じいちゃんばあちゃんも、誠吾先輩だって、弓香先輩だって、いつも史郁を心配して愛していただろ?」
「そんなの、同情に決まってる。両親に捨てられたかわいそうな女の子にみんな同情して優しくしてくれるだけ。
じいちゃんもばあちゃんも、自分の娘が出て行って寂しいから私を引き取って育ててくれただけ。
誠吾兄ちゃんだって、自分の姉がしでかした事が申し訳なくて、正義感から私をかわいがってくれただけ」
「ふみかっ」
「両親から捨てられてしまうほどの価値しかない私の事、誰も必要としてくれないし愛してくれない。
それに、そんな両親が幸せになっているって聞かされて、それを良かったなんてちっとも思えない自分のことが、嫌いで嫌いでどうしようもない」