ふわふわな恋。
そんなことを考えながらぼーっとしているとニャーという猫の鳴き声が聞こえた。

「え?」

こんなところに猫?
猫の聞こえた方に振り返ると猫が大きな蹴伸びをしていた。

あたしはココアを置いて猫に近寄り、しゃがみこんだ。

「あなたどこからきたの?」

猫を撫でるとキューと言いながら眠そうな顔をした。

ふいに頭を上げると木の向こうに小さな扉があった。

「扉…」

誰にも気づかれないような、ボロい扉。
あたしは猫ちゃんを抱え上げて、その扉をおそるおそる開いた。

扉はギィーという古い音を立ててあいた。

その中には今までに見たことのないような風景が広がっていた。

「わぁ…」

ほどほどに広い、緑が広がった場所。
真ん中に大きな大きな桜の木が一本立っている。

角には色とりどりのお花が咲いている。

これは学校の敷地なのだろうか…
綺麗すぎる。

こんな場所あったなんて知らなかった。

「あなたここに住んでるの?」

抱えていた猫ちゃんに問いかける。
答えてくれるわけないのに。

猫ちゃんはあたしの手の甲をペロペロと気持ち良さそうに舐めて、あたしの腕から飛び降りて扉の向こうへ出て行ってしまった。

「なんなんだろ…」

とりあえずここが綺麗すぎて。
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