魁龍
柊side
あの頃、龍鬼の次の総長として指名された俺は、...荒れていた
俺の前の総長は、一言で言えばとにかく凄ぇ人だった
そんな人を超えられる自信なんてねぇし、俺がその人が背負ってた龍鬼を背負うなんて...、と相当なプレッシャーを感じていた
そのせいもあって、俺は毎日繁華街で意味もなく暴れては喧嘩を繰り返していた
俺が魁姫と出会ったのも、その時だった
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バキッ ドゴッ
『...チッ、弱ぇ』
繁華街の路地裏、俺の周りには意識が無くなった男達が無残に倒れていた
顔には所々返り血が付いて、服も赤く染まっていた
ぐいっ、と顔に付いた返り血を腕で拭い、路地裏を出ようと出口へと足を進めた
すると、
「お前が最近繁華街で暴れてる奴か?」
後ろから、声を掛けられた
高くもなく低くもなく、中性的な声だった
...またか、心の中で呟く
繁華街で暴れるようになってから、そうやって絡まれる事が増えた
まぁ、まだ足りねぇと思ってたからちょうどいい
そう思いながら後ろを振り返れば、全身黒を身に纏った奴が立っていた
黒のTシャツに黒のパーカー、黒のジャージ、黒の靴
顔は、フードを深く被っているからはっきりとは見えねぇ
『...だったら?』
そう、答えれば、
「やっぱりな。お前、そこら辺にいる奴等とはオーラが違うしな」
軽い口調でそんな事を言ってきた
...何だこいつ
そう思ったが、こいつも今まで喧嘩売ってきた奴等と一緒だと思い、
『...そんな事はどーでもいいから、さっさとやろうぜ』
俺はそう言った瞬間、一気にそいつの元まで走り、顔目掛けて拳を奮った
が、俺の拳はそいつには当たらず、
パシッ、と音と共にそいつの手に収まった
『...は?』
止められるとは思ってなくて、間抜けな声が零れた