続・危険なキス
 
エレベーターの中は無言で、重い空気が流れるだけ。

だけど突っ返そうとはしていないので、空気に負けず先生の横に並んだ。


無言で部屋の前までたどり着いて
一人先に入っていく先生の後に続いて、部屋の中に入る。


先生はベッドの上に腰掛けると、片手で前髪をくしゃっとさせて、その隙間からあたしを見た。



「なんで来た?」

「なん、で……って……」

「お前とは別れたつもりだけど」

「……あたしは別れたつもりはありません」



先生だって、さっきあの男の人に「人の彼女」って言ってたくせに……。



「話が……あるから……」

「俺は話したくもねぇ」

「だけど、結局外に出てくれましたよね」

「……」



鋭い返しに、先生は少しだけ眉をしかめてあたしを睨む。


口では負けたくない。

いや、
今日だけは負けたくない。
 
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