金色・銀色王子さま
夢うつつの中、ゆっくりと体は心地よい暖房とソファの温もりで寝てしまった。



シャワーから出た隆之介は、髪の毛をバスタオルで雑に拭いてから首に掛け、黒いTシャツとスエットパンツで出てきた
ソファでタオルケットを抱き枕たみたいにして、すやすや寝息を立てる麻衣の姿を見ると呆れつつも少しだけ安堵した。


「…あんなことあってよく寝れるなほんと」


濡れた髪の毛をかきあげて、バスタオルをイスにひっかけるとタオルケットを麻衣から放してかけてあげる。



「……んっ…」


「……無防備すぎだろ。ばーか」



麻衣の顔にかかった髪をそっと上げて指に絡ませた。
するすると指との間からすり抜けていく。
掴めそうで掴めない、誰かさんと一緒だ。
そうゆう風ににすり抜けられると、苛立つほど構いたくなる。


このままいっそ、襲ってしまおうか
襲われても、文句は言わせない



悪いのは…あんたなんだから






「………!」
唇が触れ合う寸前で、龍之介はピタッと止まった。
自分の前髪から零れた滴は麻衣の頬をツーッと伝う。
それがまた拒絶する涙のように見えて、片桐はそっと体を離れた。


俺のことワケ分かんない!!なんてよく言うよ
自分のこと好きだって
知ってるヤツの部屋で平気で寝るなんて


お前の方がよっぽどワケわかんねぇよ



「…俺もわかんねぇよ…こんなに好きなの」




時計の針と、麻衣の寝息が規則正しく聞こえる
龍之介のは呟くと、ソファにもたれ掛かりうなだれるようにして目を閉じた。







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