金色・銀色王子さま




仕事がすべて片付いたのは夜22時を回っていた。
覚悟はしていたけど、相変わらず体はバキバキだ。
ぐ~っと声にならない声を出して、大きく伸びをした。



「みんなお疲れ~今日も忙しかったね。まぁ年末までこんな感じになっちゃうけどガンバろ!はい、差し入れ~」

「わぁケーキだぁ!美味しそう~!店長、ありがとうございますっ 」

「フライングXmasってやつ?ふふっ。麻衣ちゃんはクリスマス、何か予定ある?」

「あ…いや…」



片桐とはそんな話していない。
それどころじゃなく色々あったし、二人の関係ははじまったばかりだし。


「なんだよ~寂しいなぁ~」

「店長は予定あるんですか?年下の彼氏くんと?」

すかさず他の子が店長に質問をした。
その隙に、いただいたチョコケーキを頬張る。
疲れた体に…何倍も染み渡る甘さ。



「うん。彼のお店忙しいから後日でも…って言ったんだけどね、クリスマスがいい!ってわざわざ空けてくれたの」

「そうゆうの大切にする彼ってすてきですねー!羨ましい~」




確かに、街はもうクリスマス一色。
日が落ちればイルミネーションが街を照らしてくれている。
いつからか…そんな日さえ忘れてしまいそうになってる自分がいて。




「もちろん、行事も大事だけど何より自分を大切にしてくれてるって…有り難いよね。
だから私も、答えたいって思うし大切にしたい。こんな気持ち、初めてよ。
この歳になって、そう思えるんだから…麻衣ちゃん、今からでも遅くないよ!」



店長はそう言って、真っ白なショートケーキを幸せそうに頬張った。



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