金色・銀色王子さま
香織は無理して笑っている。
高校からの付き合いだ、麻衣にはそのくらいすぐに分かった。
香織はフッと笑うと、ネイルサンプルを見ながら言う。


「別に~。ただ失恋てこんな傷つくもんだったけな、と思って」


「失恋?失恋したの?」


サッサッ、ファイルで爪を削る音がやたら響いて聞こえる無言の時間。
こんなときに他のお客さんはいない。


「…いや~いつものことだと思ってたよ?こんなの、かすり傷だと思ってた。まぁ私が酔った勢いでやらかしたのもあるけど。でも…あのとき冷たく突き放されて分かっちゃったんだよねぇ」


「…あの香織、全然話が読めないんだけど」


「とにかく!久しぶりにヒットしたの私の中で!そう簡単に諦められなさそう」


「そうなんだ…相手は?どんな人?」


あっ!と香織は声を上げた。
傷を付けてしまったのか、痛かったのか慌てたらサンプルを指さして言った。


「これがいい!これ、めちゃくちゃ好み!もしや、麻衣が作ったサンプル?」


「え?あ、あーそう!それ、今の季節にいいでしょ?」

「さすが麻衣、私の好みを分かってるよね!やっぱ麻衣しかいないわ私の専属ネイリスト!」


「専属って…モデルみたい」



香織はサンプルに釘付けで、相手の話はしてくれなかった。
きっと、香織の中で今言うタイミングではないのだと麻衣はそれ以上追求しなかった。
そうゆうスタイルが自分たちの友情スタンスであって、今までずっとそうしてきた。





でも、もっと早く気付いたら良かったと
後から思うことになるなんて




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