金色・銀色王子さま
賑やかな声が聞こえ、部活終わりの学生が団体でお店に入ってきた。
好きなアイドルやロックの話題に花を咲かせる。
カイトはちらっと横目でみると、「いらっしゃいませー」と声を掛けると、小さくため息をつく。



「仕事中ごめんね。でも、莉奈さん…また大阪帰るっていうから。ねぇ、もしカイトとこのままだったら…莉奈さん、もう会いにこなくなるんじゃないかなぁ」


「お節介だなー、麻衣ちゃんは」

「だって…」


あの日、莉奈が現れたあの瞬間…
あんな顔見せられて知ったんだ。
私には見せたことない、会いたかった人がいる。その想いが揺らぐ瞳を。


「俺達のことは俺達のことだから関係ないでしょ」


「関係ないけ…ど、関係あるよ…」

「何それ、日本語になってないよー。そろそろカウンターに戻るから」



カバンの持ち手をぎゅっと握った。
どんな顔すれば正しいのか分からないけど、今私は泣きそうな顔をして離れようとする彼に伝えるんだ。














「…カイトのこと、好きかもって思ってたんだから」






ピタッと足を止めたのが、彼を見なくても雰囲気で分かった。
数秒のち、顔を上げるとカイトは背を向けたまま。
振り向くわけない。




「……でも、やっぱり関係ないよね。帰るね。ごめんね、邪魔して。じゃあ」







名前を呼ぶ声が少しだけ聞こえた気がしたけど、振り向く勇気がなくて。
震える手を握りながら、足早にその場を去った。


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