愛し*愛しの旦那サマ。
そして―…
「私としてはオリジナルブレンドがお薦めなんですけど、奥様何にします?」
「あ、あの……主人が待ってるので、本当に失礼させていただきたいんですけど……」
「そんなことおっしゃらずに~。それに、もう席についてしまったんですし、一杯くらいいいじゃないですかぁ~」
「い、いや……そういう問題じゃ……」
秘書藤枝お気に入りの喫茶店に、そのままの勢いで連れ込まれてしまった私。
ここは二ヶ月ほど前にオープンしたばかりの、ジャズの流れる落ち着いた雰囲気の喫茶店―…
いや、私もここの喫茶店、雰囲気が良さそうだから一度入ってみたいって気になってたけどね。
まさか、このお嬢さんと初来店することになるとは思いませんでしたよ……(理沙子ト来タカッタ……)
そんな事を思って、げんなりしていると、
「お待たせいたしました」
と、秘書藤枝が何時の間にか呼んだ店員さんが注文をとりに来た。
「私、オリジナルブレンドで。奥様も一緒でよろしいですよね?」
秘書藤枝にそう尋ねられて、
「ええ、よろしいです」
何だか素直に答えてしまった私。(シマッタ……!)
店員さんが席を立ち去ると、
「ところで奥様……」
と、話を振られる。
「さっき私が購入していたモノ、見ました?」
「いえ、そんなタールの強そうなモノを購入する姿なんて全く見ていませんわ」
「まぁ、それなら遠慮なく吸わせていただきますね」
そうニッコリ微笑むと、包み紙を破り、タバコを1箱取り出す秘書藤枝さん。