愛し*愛しの旦那サマ。
今、考えられる唯一のプラス思考といえば、バルコニーから監視を続けている今、季節が真冬じゃなくて良かった、とか、そのくらいのレベルのことを考え付くのがやっと……
百歩……いや、千歩譲って、臣くんが秘書藤枝と相乗りで帰ってきたとしても、日付が変わってしまう前に、何か一言でも臣くんが記念日のことに触れてくれたら、受けたダメージもかなり快復してくれるのになぁ……
今更だけど、私。
臣くんのこと大好き過ぎる。
大好きな臣くんから、まぁ……形式はどうであれ、“結婚”の言葉を貰った大事な日だからこそ、こんな不安にかられている状況が、
「くるしいよ……」
臣くんの前では、笑顔でいたいのになぁ……
ふと、手に持っていた携帯の液晶を見ると、時刻はPM23:17。
これはもしや、日付が変わるまでに臣くんに会うことすら出来ないというパターン……?
そんなことを思って、また溜め息をつこうとした時。
マンションエントランスから少し離れた斜め前の道路脇で停車する車が……
「タクシーだ……」
思わずそう呟いてしまう私。