愛し*愛しの旦那サマ。
「婚、約……?」
「はい。前にいた事務所の経理の男性と社内恋愛で婚約してたんです」
「はぁ……」
「けど、いきなり彼が好きな人が出来た、なんて言い出して。相手を聞いてみたら、彼の昔からの女友達で……」
それって……
その彼は身近にいた大事なヒトに、今さら気がついたという灯台下暗しパターン?
そんなことを思いながら、とりあえずFの身の上話に耳を傾けてはみる……
「まぁ、私もまさか、そんな形で破談になるなんて思ってもみなくて。しかも、婚約の話を事務所の人間みんなが知った後の破談で、何だか職場に居辛くなってしまって―…」
「藤枝さんが退職したってワケですか……?」
「はい。その通りです。その後、叔父のつてで今の事務所に入ったんです。そしたら、学生の頃に憧れていた櫻井先生がいたんですけど、」
“残念”なことにご結婚されてしまったみたいで……
と、Fは語りを続ける。
気のせいか「残念」という言葉を強調されたような―…まぁ、気のせいっていうか絶対強調したっぽいんだけどね。