愛し*愛しの旦那サマ。

乾杯の合図の後、生ビールを豪快に飲みだした左隣りの女。

虚ろな表情で口元を緩ませていたかと思うと、ジョッキを握ったまま下を向いて動かなくなった。

ここでまさかの展開は絶対に勘弁しろよ……

と、思った瞬間、隣りの女は、いきなり俺の方向に俯き加減で身体を向けてきた。

そして、身を乗り出すようにして、


「……」


とんでもないことをしでかしてくれた―…


「だ、大丈夫?」


周りの奴らが恐る恐る俺に尋ねる。

目に入るのは悲惨な汚れ方をしてしまったデニム。

ただ、そんな衣服の汚れよりも何よりこの状況は精神的に参る……


「うわ~、なかなか派手にいったな~臣、大丈夫か~?」


と、口では言いながらも傍観状態の塚本に、


「塚本、店員におしぼり持って来させろ……」


こんな状況に陥ってしまった苛立ちを抑えながら指示を出す。


そして、張本人の女は、というと、


「さ、幸代?アンタ、大丈夫なの?」

「あ~、なんかちょっと気分が良くなった~…」


慌てた様子で移動してきた、さっきまで泥酔女の真正面に座っていた女にすり寄り、


「ふぅ~…」


と、大きな溜め息をついた後、


「ス~ッ……」


自身の置かれている状況に気付く様子なんて全くなく、さっさと寝てしまった。


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