愛し*愛しの旦那サマ。
数秒間、触れ合った後に、ゆっくりとまた離れる口唇。
それから、自分の口から出て行く言葉は、
「帰って欲しくない」
「え……」
「このまま、抱きたいんだけど」
今だかつて、誰にも言ったことが無い言葉で―…
出来ることならば、今夜はこのまま彼女を帰したくない。
そんな想いばかりが膨らみ、勿論、抑えようともしたが、気付けば彼女に触れてしまっていた―…
「抱いてもいい?」
「……」
「嫌なら、やめるけど」
彼女から断ってくれないと、もう、自分からは抑えきれそうもない。
また、直ぐにでも彼女の口唇に触れられる距離で、じっと彼女の瞳を見て、彼女の答えを待つ。
数秒間の沈黙。
そして、彼女は、
「お願い……します」
その言葉と同時に、こくりと小さく頷く。
そんな姿を見て、俺はまた、そっと彼女の口唇に触れた。