御劔 光の風3
サルスの鼓動が大きく、ゆっくりと身体中に染み込むように響いた。

意識の奥底、暗闇の中で誰かが不適な笑みを浮かべたような気がして反射的に右手を口に当てる。身体の中にある何かを出さないようにするためか、溢れ出る恐怖に捕われないように舵を取る為かは自分にも分からない。

しかしそれも僅かな時のこと。

次第に沸き上がってくる感情はナルの死を信じたくないという悲しみだった。首を何度も横に振り、身体でも真実への拒否を続ける。

「ナルは今どこに?」

声が震えていた。

「遺体はない。光となって消えた。」

「何故?」

サルスの問いにカルサは首を横に振る。

「看取ったのか?」

「いや、俺が見た時はもう。」

全てを話さなくてもサルスには伝わった。誰に看取られる訳でもなくナルは目を閉じてしまったのだろう。こんなにも国に尽くし、自分たちを支えてくれた母のような存在の人が何故こんな目に合わなければいけないのか。

穏やかな最期だったとは思えないからこそ悔しい気持ちが拭えない。

ナルを想い現状を嘆く中、ふいに浮かんだ事がありサルスは口を開いた。

「…大臣に伝えないと。」

「大臣?」

「ハワード卿だ。」

サルスの言葉の意味はカルサには上手く伝わらない。訝しげな様子のカルサにサルスは付け足して話した。

「老大臣は昔、ナルと恋仲だったそうだ。」

カルサと貴未は少し間抜けな顔で口を開けたまま固まっている。

「知らなかった…みたいだな。」

サルスの苦笑いに二人の口が静かに閉じた。

そのあとにじわじわと沸いてくる妙な感じ。自分の母親の昔の恋愛を聞いている様で恥ずかしいような、むず痒いような、何とも言えない気分になった。自然と表情も青ざめ影を背負ってしまう。

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