御劔 光の風3
「なんか…複雑な感じだよな。」

「ああ。まあ、な。」

貴未の言葉に曖昧な返事をして目を逸らす。

そんな二人を見てサルスはただ淋しそうに笑っているだけだった。どこか遠い目をして、まるで消えてしまいそうに儚く思える。

「大臣には俺から伝えよう。」

見兼ねたカルサが口を開いた。きっと何も事情を知らない人間の方が向こうも気が楽だろう、そんな思いが彼の目から伝わってくる。

「頼む。」

それが今のサルスにとって精一杯の言葉だった。ハワードの事を思うと胸が痛むのだろう、何よりナルの無念さを思っているのかもしれない。

しかしサルスを見つめるカルサの表情は冴えないことにも気が付いた。

「サルス、話がある。」

力強い声、場の雰囲気を変える声の調子にサルスは何かを感じる。

「良い話、じゃなさそうだな。」

視線をカルサと貴未の二人に送った。苦々しく微笑むサルスに困ったような顔をした貴未の視線がカルサに移る。それに促される様にサルスもカルサに視線を向けた。

それを機にカルサが口を開く。

「近い内に俺は国を出る。」

何も反応しなかった、いや、しいて言うなら目が少し大きく開いたくらいだろうか。カルサとサルスの視線はぶつかったままで貴未はそれを黙って見守っている。

「サルス、王位継承者はお前しかいない。俺に代わり国を治めてくれ。」

カルサにしては珍しい言葉の使い方だった。まるで両手でサルスの手を取り強く握りながらお願いをしているような感覚。サルスの思い出す限りではそんな風に人にものを頼む事は今までなかった筈だ。

それだけにカルサの思いがひしひしと伝わってくる。

カルサの思いを受け入れるのに時間がかかったのか、暫くしてからサルスの沈黙が破られた。しかし思う中で良くはない反応に近い。

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