御劔 光の風3
「何の為に国を出る?この国が滅びてもいいのか?」

呆れているような、それは静かな怒りにも似ていた。苦々しい笑みが彼の感情を明らかにしているのだとしたら、カルサの言い分を聞き入れる気持ちは薄い。

「違う。この国を守る為に出ていくんだ。」

真っすぐに向けられた言葉は、これが自分の決めた道であると全身で訴えているようだった。

「理由は?」

サルスの声が低く響く。いつにない鋭い目付きでカルサを迎え、傍に控えているだけの貴未が息を飲むほどの威圧を持っていた。

「今回の魔物襲撃の首謀者、大方予想は付いている。」

「御劔関係者、そう言いたいのか?」

「俺とリュナを封縛した赤い目の侵入者。おそらく奴が仕向けた事だろう。」

あの嵐が吹き荒れる中、突如現れその存在を大いに知らしめた侵入者。その出来事は皆の心に深い傷跡として刻まれた男のことだとサルスは目を細めた。

「それが本当だとして、どうするつもりだ。」

「倒す。その為に国を出る。」

「何故カルサじゃなきゃいけない?他にも御劔がいるだろう、何故国を出てお前が倒しに行かなければいけないんだ?」

「他の御劔では駄目だ。俺以外の代わりは利かない。」

次第に二人の感情が昂っていくのが伝わってくる。落ち着いた口調が少しずつ力を含み、声量も段々と増してきているのだ。

「何故お前ばかりが背負う?」

思いが伝わらない、実を結ばないことのもどかしさから身体も自然と動いてしまう。言葉の通りサルスにはどうしてカルサなのかが分からなかった。

「何でもかんでも背負い過ぎじゃないのか?お前はいつもそうやって自分の責任にするが国の話でないなら別だろう?」

サルスの言い分は至極当然だ、何故なら彼はカルサの過去を知らないから。サルスには太古の国の皇子であることを明かしていない今、その理由がうまく伝わらないもどかしさにも襲われるが仕方ない。

どこに身を置いても結局は上に立ち束ねることが役割となるのだ。

< 485 / 729 >

この作品をシェア

pagetop