御劔 光の風3
小さな声はテスラには届かない。

かつて自身の力が悪影響を及ぼすのではないかと雷神の力を封印していた時代があった。

それからも力は殆ど使ってはいない。

テスラの言う通り自分の力がどれ程のものなのか知る必要があるのは確かだ。

「ウレイ…。」

脳裏に偉大なる神官の姿を浮かべて力を込める。

腰に備えていた剣を握り、鞘から引き抜いた。

どこまで出来るのか分からない。

もしかすれば潜在能力はあれど僅かな力しか扱えないのかもしれない。

だけど。

「はああああっ!!」



*

「…はあ。」

静かな廊下に空しいため息が響いた。

こんなにも修業部屋は遠いところにあったのだろうか。

界の扉の番人であるテスタの住み処は、界の扉が並ぶ空間とは別に存在していた。

家ともいえる場所にもいくつかの部屋に繋がる扉があり、さっきまで日向が修業部屋として使っていた場所もその中の一つだ。

今から向かう部屋はテスタが食事する為に作った部屋で、ここに来てからの日向は寝室と修業部屋とその部屋を行き来していた。

その三つの部屋以外はほとんど見たことがない。

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