御劔 光の風3
「日向も頑張ってんだな。」

そう呟くと貴未は日向の腕を肩に回して皆の集まる場所へと歩き始める。

貴未を見上げ、ふと自分がおかれている状況を思いふわりとした感覚に包まれた。

祷と出会い、リュナを見つけてからは不思議な事が続いている気がする。

胸の内にある様々な疑問符は積み重なっていくだけで少しも消化されずにいた。

それも全て記憶を取り戻したら解決するのだろうと思うと、やはり口にしても意味は無い気がして言葉に出来なくなるのだ。

もどかしいと言えばもどかしいけど、 何となくまだ時期ではない気がして心が落ち着く。

「そういえば、貴未はどうしてここに?」

「カルサ達と来たんだよ。日向を迎えに行ったと思ったんだけどな、会ってない?」

「会ったよ。僕もオフカルスに行きたいって言ったら好きにしろって言ってくれた。」

日向の言葉に貴未は声を出して笑った。

好きにしろと答える辺りにカルサらしさを感じたのだろう。

「そっか、良かったな。」

後頭部の辺りを優しくポンポンと叩いて貴未は歯を見せて笑った。

それは言ってしまえば子供扱いなのだが、日向には心地いい。

貴未はシードゥルサにいた時に日向と一番接していた人物だったから、この距離の取り方がありがたかったのだ。

「うん。」

素直な言葉が出る。貴未は日向にとっては特別な存在だった。

国を出て、シードゥルサに来たのは自分の素性を知りたかったから。だから後悔なんてしなかった。

助けを求める人がいる、こんなわずかな力しか持たない自分を必要とする仲間がいるなら尚更のこと迷いなんてなかった。

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