御劔 光の風3
「なんだよ急に。あの後も散々謝ってたじゃんか。」

「うん、そうなんだけどさ。」

納得できずに言葉がつまる。

やっぱりあれだけ謝ってもずっと心のどこかでひっかかっていた。

何故心を許せる人に話す事が許されないのか。

「千羅にでも口止めされてたんだろ?仕方ないさ、あの時はそれがベストだ。」

貴未はまだ引きずる日向に対し、明るい調子で応えてみせた。

日向が火の力を持つこと、それを明らかにしたのはあの襲撃の最中だった。

戦場を走る中で日向の姿に気付いた貴未は彼を守ろうと駆け寄ったのだ。しかし貴未は首を横に振った。

自分だって戦える、自分は御劔の一人炎神なのだとそこで初めて貴未に打ち明けたのだ。

「あのさ、そんな過去の事いちいち気にしてたらハゲるぞ?」

ため息交じりの言葉と共に後頭部の真ん中あたりをつつかれる。横目に見る千羅は意地が悪い顔をしていたので日向は思わず吹き出してしまった。

「それはやだな。」

「あはは!だろうな。」

日向に笑顔が戻ったのを確認すると貴未は声を上げて笑い、いつもと同じように日向の孤独感を和らげていく。

孤独は恐怖に似ていて祷と二人で支えていくには弱すぎた。

何の迷いもなくシードゥルサに来たはずなのに、その選択は間違いなのかもしれないと考えてしまう日もあった。

自分の力について何か分かるかもしれない、そんな希望を抱いてきたのに故郷に居た時よりも肩身の狭い思いをしている。

そんな自分が惨めで泣いてしまった日もあった。

そんな時にタイミングよく貴未は声をかけてくれたのだ。

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