御劔 光の風3
不安な気持ちで心が染まってしまいそうな時から何度となく救われた。

「ねえ、貴未。前に何でも話してくれていいって言ってくれたよね?」

「ああ。どうした、何かあるのか?」

小さく頷いてみたものの、自分で切り出しておいていざとなったら躊躇してしまう。

しかしここで飲み込んでしまうと貴未に気を遣わせてしまうし、何より燃えかすがずっと残ったままになって日向自身にも良くなかった。

言葉につまる日向を貴未は黙って待ってくれている。

「カルサさん…僕の事煙たがってるんじゃないかって思うんだ。」

日向の言葉に貴未は足を止めた。

「だから、オフカルスに行くのも本当は嫌がってるんじゃないかなって。」

まるで泣きだしそうになるのを堪える子供のように口元には力が入っているのが伝わってくる。

「五大皇力の一つである火の力、自分を目醒めさせた人物だったらある程度興味を持つと思うんだよ。力が欲しい時期なら尚更。」

「でもカルサは近寄るどころか拒絶しているように見える、か。」

付け足して言われた貴未の台詞に日向は頷いた。

貴未には日向の言わんとしている事を理解したがカルサの思いも知っている。

すぐに答えられる言葉が見つかる小さな唸り声を漏らした。

「僕はこの先どうしたらいいのか分からないんだ。自分が誰なのか知りたいだけなのに。」

日向がシードゥルサに来てから自分について分かった事は、自分の火の力は稀に見る特別なものだということ。だから尚の事知りたいと願ってしまったのだ。

願った分、もどかしい環境に焦りもする。

自分は一体何者なのか、何故この力を持つ事が出来たのか。

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