御劔 光の風3
「僕の探している場所がシードゥルサ以外なら、僕はそこへ行きたい。だからカルサさんが次に向かおうとする場所に僕も行きたいってお願いしたんだ。」

逃げ道や安全は自分の手で断ち切ってしまった。もう答えのない不安な思いを悩むくらいなら前を向いて進みたかった。

日向の気持ちをカルサが知ることは無いだろうが、共に生きたいという申し出をカルサは言葉こそ不愛想なものの了承の答えを出してくれたのだ。

嬉しかった、でも時間が経つにつれて不安や申し訳なさが出てくる。

その気持ちが育って今の日向を落ち込ませていた。

「でも…やっぱり迷惑かなってさ。」

「成程ね。」

日向の思いは貴未に通じたのだろう。

たった一人で自分の運命を模索しながら進む日向の生き方はどこか自分に重なるものがある。

何も知らないどこかも分からない場所に一人で乗り込んで生きていく事は想像できないくらいに心と身体を消費させる苦労があるのだ。

そこに楽しみなんてない。

いつか帰るのだという目的、自分を探したいという目的があるからこそ何とか立っていられる危うい場所で戦い続けているだけだった。

人の言葉に敏感に反応して心を痛める事なんて数えきれない。

だから言えないことは多くても、苦しみながら前を見据える日向の気持ちに向き合おうと決めたのだ。

「カルサは日向の事を嫌っている訳じゃない。」

貴未の声に誘われて日向は貴未と視線を合わせた。

「むしろ大切にしている筈だ。じゃなきゃ、日向をここに連れてこない。」

「どういう事?」

「ここはどこよりも安全な場所らしい。界の扉の間に管理人がいる事なんて俺は知らなかったんだけどさ、まあ知っている方が希らしいけど。ここは誰にも知られない、干渉されない特別な空間らしいんだ。」

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