君の『好き』【完】
柱の前で待っていたら、
吉井くんが戻ってきた。
「待たせたから、そのお詫びってことで」
そう言ってキャラメルの箱を差し出してきた。
「えっ、そんな、いいよ。
だって私......待っていたかったんだもん。
吉井くんと一緒に帰りたかったんだもん」
わぁ......私、何言ってんだろう.......
恥ずかしくなってぐっと下を向いた。
「ほら、口開けろ」
く、口???
顔を上げると、目の前に、
包み紙の剥がされた長方形のキャラメルが見えた。
「えっ」
吉井くんがキャラメルをつまんで、
「早く開けろ」って、口元につき出してきたから、
ちょっと口を開くと、ぽこんとキャラメルを口に入れられた。
甘くて、おいしい......
「あとは電車で食べな」
そっと手を掴まれて、手の平にキャラメルの箱を乗せられた。
「ありがとう......でもこんなにいっぱい.......
そうだ、吉井くん、半分こしようよ」
吉井くんは、ふっと下を向いて笑った。
「いらねーよ」
「そんな.......すごくおいしいのに」
吉井くんは首を傾げた。
「そんなうまい?」
「うん」
「じゃあ、一個でいいよ」
「え、一個?」
「そ、一個」
私は箱から一個出して、包み紙を剥がして、
吉井くんに差し出した。
「俺も今食うの?」
「あっ!!そっか.....ごめん、どうしよう......」
キャラメルをつまんで、どうしようどうしようとしていたら、
吉井くんの顔が私に近づいてきて、パクッと目の前で食べた。