君の『好き』【完】
「足、大丈夫か?」
え、足?
隣を見上げると、吉井くんと目が合ってしまって、
ばっと目をそらして前を向いた。
「転んだこと、忘れてた」
私がそう言うと、吉井くんはあはははっと笑い出した。
「だってね、私よく転ぶから......
またか、みたいな。
例えばね、こういう段差とか.....うわっ」
道路脇の段差で、転ぶ真似をしようとしたら、
本当にバランスを崩してしまって、
ぎゅっと吉井くんの腕にしがみついてしまった。
「ご、ごめん......」
立ち止まって、そっと腕から手を離すと、
吉井くんは下を向いて、
何も言わずに私の手を繋いで、また歩き出した。
ドキドキした。
吉井くんの大きな手に、
その温かさに.......
横目で吉井くんの顔を覗き込むと、
吉井くんは、私と反対側の方を向いてしまっていて、
その表情が見えなかった。
ずっとドキドキしながら、
ずっと何も言えないまま、
駅までの道を、二人手を繋いで歩いた。
駅に着き、エスカレーター前で繋いだ手を離されると、
吉井くんは私の後ろに回って、先に乗せてくれた。
そして、駅構内を少し歩くと、
「ちょっと待ってな」と、吉井くんは駅構内のコンビニに入って行った。