ツンデレくんをくれ!
しばらく話していると、中出が「眠い」と呟いた。


「さっきまで寝てたじゃん」

「バイトもないんだし寝かせてよ」


そう言って、中出がベッドに潜り込む。


「ちょ、ちょっと、中出、あたしはどうやって帰れっての? あたしここからの帰り道知らないよ」

「ちゃんと送ってくって。二時間経ったら起こして」

「その間あたしは放置!?」

「…………」


黙ったと思ったら代わりに聞こえてきたのはすーすーという規則正しい寝息。


ね、寝たー!


おいこら、仮でも偽でも彼女は大事にしろよ!


「ちょ、中出ー……」


中出を起こそうと声を上げたけど、語尾が弱々しくなってしまった。


……ったく、あたしは二時間もの間どうすりゃいいんだよ。


その間に家族が帰ってきたらあたしはどう説明しろってのよ。


知らないよ、あたし。


ふう、とため息をついて、あたしは文庫本を取り出した。


仕方ない。本でも読んで時間を潰すか。


これでも一応、文学部の日本文学を専攻している。


本を開いて文字を目で追う。


でも、全然集中できなかった。


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