ツンデレくんをくれ!
中出は今何を思っているのだろう。


ふと思った。


あたしはこんなに恥ずかしい思いをして日夜忘れるために必死こいてるけど、キスされたあいつは今何を考えているのだろうか。


好きでもない女にキスされて迷惑と思っているだろうか。二度と関わりたくないと思われただろうか。


いや、案外何も考えてないかもしれない。何せこの一週間、見れないあたしが見た限りだけど、中出は今まで通り普通に過ごしている。


廊下ですれ違う時も、部活の時も、今まで通りなんだかだるそうに、それでいつも通り愛想悪くその場にいる。


なんであたしばっかりがこんなに悩まなければならないのだ。あ、あたしがキスしちゃったからか。


先を見据えようともしない自分のあほさに泣けて来る。


どっちみち中出と話せなくなるなら、綺麗に終わりたかった。


ありがとうと言われた時から覚悟していた。話せなくなる以前のあたし達に戻るのだ。わかっていたのに。


期待なんかしたあたしがばかだった。


偽の関係が終わっても、普通に話せるって、自然と傍にいれるって、夢を見てしまった。


現実はそんなに甘くないのに。厳しい世の中だとは、期待通りにはいかないってわかっていたはずなのに。


失恋ばっかしてきたあたしが、それは一番よくわかっていたはずだったのに。


彼氏と友達を一気に失ってしまったような感覚だった。


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