凪とスウェル
お尻に衝撃が走り、ギロリ後ろを振り返ると、隆治があたしの自転車の後ろタイヤを蹴っていた。


「アンタねー、あたしの自転車壊す気?」


いつも通りの登場で嬉しいくせに、つい憎まれ口を叩いてしまう。


「うるせぇ、バーカ」


いじわるなその顔に、なぜかホッとしてしまう。


やっぱり隆治はそうでなくちゃ。


毒を吐かない隆治なんて、隆治らしくなくてイヤだ。


スッとあたしの横に並ぶ隆治。


隆治は大抵、両肘をハンドルにかけて顎を乗せる。


もう何度、こうやって朝のフェリーを一緒に待ったかな?


隆治はなんだかんだとあたしと一緒にいてくれる。


嫌われては、いないんだよね…?


ちょっとくらい、うぬぼれてもいいのかな…?
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