凪とスウェル
付き合うことになったと言っても、特に以前と変わらない毎日で。


俺は朝から夕方までひたすらパン作りだし、ご両親がずっと家にいるから、千春さんもそうあからさまな態度には出れないようで。


そうして、特に何の変化もないまま月日は流れて。


千春さんが大学2年生になって、数ヶ月経った頃だった。


突然、師匠が作業場で倒れたんだ。


びっくりして師匠のそばに駆け寄ったら意識がなくて、これはまずいと思った俺は、店舗にいた奥さんに声をかけ、すぐ救急車を呼んだんだ。


奥さんはすごくパニックになっていたけど、必死に励ましながら冷静に行動したんだ。


幸い発見も早く、すぐに手術が行われ、師匠は一命を取り留めた。


だけど、これからは無理は禁物と医者に言われて。


でもお店のこともあるし、どうしようかと相談した結果。


師匠が、俺に任せるとおっしゃったんだ。


もう教えることは全て教えたし、きっとお前なら作れるはずだって。


そう言われてすごくドキドキしたけれど。


店をずっと閉めておくわけにもいかなくて、俺…一人でパンを作る決心をしたんだ。
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