凪とスウェル
千春さんって、どうやら負けず嫌いなようで。


足が回復してからは、ひたすらに勉強をし始めたんだ。


どうせならスポーツ推薦で決まっていた大学よりも、偏差値の高い大学へ行きたいと言い出して。


俺、その勉強にも付き合って、一緒に図書館へ何度も通ったよ。


わからないところがあると、片岡に電話して教えてもらったりもして。


千春さんの集中力はすごかった。


予備校での模試の成績もどんどん上がって、晴れて有名女子大に合格したんだ。


俺も千春さんもご両親も、それはそれは喜んだよ。


そうして千春さんが大学へ入学して、しばらくした頃。


千春さんに言われたんだ。


俺のことが好きだって。


付き合って欲しいって…。


でも俺、千春さんの足を奪った張本人だよ?


そんなのダメだって言ったんだけど。


俺に会えて良かったって言うんだ。


俺に出会えたから、事故に遭ったことに感謝したいくらいだって。


そこまで言われたら俺、何も言えなくて…。


その瞬間、すずの笑った顔を思い出して泣きそうになったけど。


もう引き返すことは出来ないから。



だから俺、千春さんと付き合うことにしたんだ…。
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