凪とスウェル
八神の言葉に、心臓が大きく脈打った。


それを悟られないようあたしはすぐさま、避けてないわよと答えた。


大体学校じゃよく話すし、最近じゃ八神はハルとも話すようになって、三人で話したりすることもあるというのに。


「じゃあなんでフェリーの便コロコロ変えるんだよっ」


「あ、あれは早起きすれば7:10に乗るし、寝坊すれば次の便に乗ってるだけ。
特に決めてないのよ」


「へぇ…」


素っ気ない返事。


一体コイツ、何が言いたいのか…。


しばらく庭をじっと見つめていた八神だったけど、急にぱっとあたしの方を見た。


「なぁ。お前、釣り好き?」


「はぁ?」


突然何を言い出すのかと思えば。


急に話を変え過ぎじゃない?


「俺、もう今日は配達ないんだ。付き合え」


「なっ」


「あー、でも今停めてるのは配達用のバイクだから、一緒には乗れねーな。

えーっと、じゃあ3時に公民館前に集合。

チャリで来て」


「ちょっ。あたし、行くとはひと言も行ってないわよ」


「いいから来いって。キヨさんにはもうOKもらってるし」


「はっ?」


い、いつの間に話をつけてたの?


「まぁそういうことだから。3時だ。遅れるなよ」


そう言うと八神は、早足で坂を下りて行ってしまった。

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