やくたたずの恋
 カシュクールの合わせ目に、ほんのりと浮かぶ胸の谷間に目を遣る。これは、悦子が「貧乳矯正ブラ」と呼ぶ、ブラジャーを着けているお陰でできたものだ。寄せて上げて、更にパットを重ねてアゲアゲにする、超上げ底ブラだ。
 ……虚しい。こんなおっさんとの結婚のために、ここまで努力するなんて。
 干物になっていた雛子の心は、更に熟成し、腐敗の一歩手前に来ている。もうどうにでもなれ。そんな投げやりな気分も漂っていた。
「恭平、久しぶり」
 部屋のドアが開き、男の声が背後から聞こえる。振り返ると、スーツ姿の男が立っていた。恭平同様に長身で、大きな目と小さな口のバランスが程良い、優しい顔をした男だった。
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