やくたたずの恋
「今日は突然の予約で申し訳ないね」
「大丈夫だ。こっちとしても、願ったり叶ったりだ」
 恭平はそう言って、横に立つ雛子を顎で指し示した。
「お前が好きそうな、清純派のお嬢さんを入荷したところだったからな」
 にゅ、入荷? ふざけるな!
「新商品」とタグが貼られた気分になるものの、雛子は露骨に怒りは表せない。
「大事なのは建前と笑顔」。そんな家訓のある政治家一家で育ったせいで、どんな時でも笑顔ができるようになってしまっていた。
 選挙用のポスターに映った父の笑顔。それによく似た表情を浮かべつつ、雛子は男に頭を下げた。
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