やくたたずの恋
 正面にいる沢田老人も、お茶を啜っていた。最初は変わらない表情で、皺の寄った唇を茶碗につけていた。だが次第に、表情が険しくなってきているのが分かる。
 沢田様も、不味いと思ってるんじゃないのかなぁ?
 沢田様の口の中でも、牛が鳴いているんだよ、きっと。モウモウモウモウ、うるさいんだ、絶対に!
 その確信を持った瞬間、雛子は立ち上がった。 
「あ、あの! よかったらこのお茶を、私に淹れ直させていただけませんか?」
 茶碗を持ったままで、沢田老人は雛子を睨む。それは「黙れ」と告げるものだったが、雛子は怯むことなく言葉を続けた。
「私だったら、このお茶をもっと美味しく淹れられると思うんです! お願いです! 私にやらせてください!」
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