やくたたずの恋
「ちょっと、影山ちゃん! 巨乳チェックしてる場合じゃないわよ! ヒヨコちゃんのこと、心配じゃないの? この仕事を始めて2日目でいきなり沢田様に当てるなんて、小学一年生に微分積分をやらせるようなモンよ!?」
「俺は心配なんかしてねぇよ。ダメならダメで、お嬢ちゃんにこの仕事を辞めてもらうまでだ」
「もしかして……あのお嬢ちゃんを辞めさせたいから、わざわざ沢田様にあてがったってこと?」
 恭平は返事をしない。「言わなくても分かるだろう?」と言わんばかりに黙りこくるのは、彼のずるさなのか。それとも弱さなのか。今の悦子には、それは残酷さとしか思えなかった。
 この『Office Camellia』に在籍するベテランの女性たちにとっても、沢田は難敵の一人なのだ。そんな相手に、初心者マークを全身に貼りつけた雛子を派遣するなど、無茶や無謀どころの話ではない。残酷だ。
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