やくたたずの恋
「それって……今でもドキドキするってことですか?」
「ドキドキ?」
「はい。人を好きになると、みんなドキドキするって言うじゃないですか」
 雛子の友人たちは皆、恋をすると、「ドキドキする」だの「胸がときめく」と言っていた。そんな心臓病に似た症状が出ることこそが、「恋」や「好き」という気持ちだと、雛子は思っていたのだ。
 花柄模様にフリフリのレースがついたような、雛子の恋愛観。それを打ち破るように、星野は声を上げて笑った。
「君は若いなぁ! 確かにドキドキする愛情もあるだろうが、それ以外にも、たくさん愛の形はあるんだよ」
 若い、という見下しを含んだ星野の言葉に、雛子が傷つかない訳ではなかった。だが今はそれよりも、詳しく訊いてみたかったかった。この世にある愛や恋の、さまざまな形というものを。
< 279 / 464 >

この作品をシェア

pagetop