やくたたずの恋
「お前が恭平くんを説得して、影山の家へと連れ戻し、お前と結婚すれば、うちの借金を全てチャラにする、と社長は言ってくれているんだ! それごときを簡単にできないとは、それでも横田家の娘か!」
 父が、影山社長の経営する『影山興業』から、数億円の借金をしている。
 その事実を雛子が知ったのは、ついこの前のことだった。
 選挙費用や、永田町における様々な根回し。それらにかなりの額の金銭が必要なことは、政治家一家で育ってきた雛子には、十分分かっている。
 だが、それによって、父が地方自治体の年間予算ほどの借金を抱えていたなど、思ってもいなかったのだ。
< 40 / 464 >

この作品をシェア

pagetop