やくたたずの恋
「ほら、飲んで」
 キッチンから戻ってきた母は、紅茶を出してくれた。青い薔薇の絵が描かれたカップに、琥珀色の輝きを持つ液体が注がれている。
 マスカットにも似た香り。それを味わいつつ一口啜れば、胃の中も、心の中も、ふんわりと優しくなっていく。
「美味しい」
 雛子が温かい吐息と共に言うと、母は嬉しそうに笑う。
 母の淹れたお茶は、いつも美味しかった。緑茶であれ、紅茶であれ、コーヒーであれ、どれも他の人が淹れるのとは違う、不思議なまろやかさと深みがあるのだ。
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