やくたたずの恋
「お母様って、お茶を淹れるのが本当に上手よね」
「ありがとう。昔からね、『お茶を美味しく淹れるためには、怠け者になれ』って言うのよ」
「それって、どういうこと?」
「美味しいお茶を淹れるにはね、緑茶でも紅茶でも、茶葉がゆっくりと開くのを待たなきゃいけないの。それができるのは、のんきな怠け者だ、ってことね」
 雛子の正面のソファに腰掛けた母は、お茶を啜りつつ、雛子を上目遣いで見た。
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