やくたたずの恋
「……では、私がちゃんと働いて、しっかりした人間になればいいんですか? 働いて、立派な女になれば、あなたは私と結婚してくださるんですよね?」
 恭平は返事をせず、雛子を見ていた。その様子には、これまでのようなからかいの色はない。
「ここって、派遣会社なんですよね? だったら、私をここで働かせてください!」
 声が震えている。覚悟を持って言っているにもかかわらず、体がカチコチになって、自分の言葉を「無理無理! マジ無理!」と否定しているようだった。
 やっぱり私は、「お嬢様」から抜け出ることができないのかな?
 ……いいや、違う! そんなこと思っちゃダメ!
 雛子は一歩、恭平へと近づく。彼の瞳は、彼女の動きに合わせて、微かに揺れた。
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