やくたたずの恋
 この結婚は、お父様のためだけじゃない。
 影山社長のためでもあるし、私を生んでくれたお母様も、「役立たず」から抜け出せるんだから!
 焦ってはいけない。雛子は小さく呟き、母が昨日、勇気づけてくれたことを思い出す。
 焦ると、お茶だって美味しく淹れられない。お茶だけじゃない。何だってそうなんだ。この結婚のことだって、きっとそう。
 ならば、ここは落ち着いて、恭平さんの望みに合うように、じっくりと努力するべきなんだ。
 雛子は何度か大きく息を吐き出す。甘く柔らかなクリーム状だった雛子の心が、次第に金属に似た光を帯びていく。
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