ワガママ狼男と同居始めました。
「そんな脚力ではヒトからは逃げられんよ。」
着物の袖からキセルを取りだし、ふかす。
こんなに雪が積もっているのにその女は裸足だった。
本当に狼女なのか……。
「小僧、名はなんと言う?年は?」
「……6歳。名前は志木……。小野寺志木だ!」
「たいそうに姓まで持っているのか……。」
狼女は小馬鹿にするようにクスッと笑った。
「何がおかしい!!」
「すまんすまん……。私の名前は丙。お前、親がいないのだろう?私達と暮らそう。」
「俺は独りでも生きられる!!」
「強がるな。生きる術も知らぬガキが。」
「なっ!!!」
「独りで暮らすにはこの山は寒すぎるだろう?私には家族がいるんだ。」
丙はキセルの灰を捨て、立ち上がった。
「おいで。」
俺は丙の手を握った。
久しぶりの温もりに泣きそうになった。