春光道・夢

夢

　雨上がりと共に日が昇る。
　桜から舞い降りたピンク色の花びら達が、濡れた道のほとりで風に吹かれていた。
　雨に濡れた土の香りが仄かに風に流され、私の鼻が敏感に反応している。
　閑静な住宅街、空を見上げれば、遥か向うで灰色の雲が素早く流れているのが見える。
　柔らかい陽射が快い。
　温もりのある風が快い。
　木々がうねる音が快い。
　一杯の珈琲を思い出させる、織り成す景色が心に映す。
　学校に行く小学生達が楽しそうに走っていた。
　ランドセルを揺らしながら走っては止まり、友達の顔を見て笑顔が咲いていく。
　何故か懐かしく、心が暖かくなる。
「あっ。蝶だ」
　小学生の一人が私を指差して言った。
　水溜りに映った私は風に吹かれヒラヒラと舞い青い空を目指した。
　あの桜の花びらのように。