世界一幸せな国Ⅰ




どれぐらい経ったのだろう。


まだ、手術中の文字は明るいままだ。



このまま、2人の笑顔を見られなくなったらどうしよう。


謝ることも、お礼を言うこともできなくなったらどうしよう。


おはようという言葉を交わせなくなったらどうしよう。



どんどん不安が押し寄せてくる。



俺たちは、軽い検査だけで済んだのに。


2人はまだ苦しい思いをしなければならない。



その原因を作ってしまった俺にできることはあるのか。


そもそも、俺に、2人に合わせる顔はあるのか。



無言のまま過ぎていく時間。


重い空気。


よくないことしか考えられなくなっていく。



ア「心配するな。2人の怪我はお前たちのせいではない。自分を過信し自分を守ろうとしなかった2人と、気づくのに遅れた私たち親のせいだ。ただし、後悔することが1つでもあるというのなら、二度とそうならないようにしろ」



俺たちの顔をひとりひとり丁寧に見ながら、お父様は話した。


瞳は、しっかりしてそうでも、不安と後悔を感じ取ることができた。



みんな、何かしら後悔はある。


当然なんだ。



俺とお父様以外は、みんな、ずっと泣いている。


不安なのも、後悔しているのも、俺だけではなかった。

< 131 / 256 >

この作品をシェア

pagetop