世界一幸せな国Ⅰ
「おい、起きてくれユアン。俺は、お前に伝えたいことがあるんだ。寝てるユアンじゃない、起きてるユアンにだ。……ローナから聞いたぞ。お前、すぐに起きるんじゃないのか。ボールドウィンの者がいつまでも寝坊助でどうする。俺は、男には甘くないぞ。……起きろ」
間髪を入れず、淡々と話し続けた。
内心はかなり不安なのにこんな話し方をしてしまうのは、きっと、兄としての威厳とかプライドなのだろう。
あいつが起きた後に言いたいことは謝罪とお礼だというのに、なんて上から目線なんだ。
もし自分が、お父様に「おいこら早く起きろ」と叩き起こされて、「この前は悪かった。助けてくれてありがとな」と言われたら、「……は?」としか返せないだろう。
さっきのはなんだったんだと回らない頭を必死に回すだろうし、ギャップについていけないだろう。
言った後になって気が付いた。
そして、アーヴィンがそう言うことを想像すると、笑いすらこみ上げてきた。
「おーいユアンー。いい加減起きろって。俺のしたいことができないじゃねーか」
すると、ゆっくりとユアンの手が動いた。