世界一幸せな国Ⅰ

どこだろ、ここ……。


気がつけば、そこは洋館の一室だった。

見慣れない風景が広がっている。


………えっと?


目の前でこちらを覗いている大きな男性。

……お父さんになるのかな?



ところで、赤ちゃんは生まれた時どうするんだったっけ?

泣くんだっけ?

分かんないから、とりあえず声を出そう。


スゥ…….ってあれっ?

全然息吸えないんだけど!



なにこれ、体が思うように動かないし話せない!!

「お、ぎゃ、おぎゃぁぁああ!!」


何これっ!


思ったこと全然伝わんないし!


すんごい不便なんじゃ……。


「おぎゃぁぁああ」


えっ、もしかして……彼方?

そうだ、彼方だ!


私の体は助産師によって運ばれているが、その間、彼方に心で話しかけてみる。



(おーい、彼方ぁ!藍乃だよぉ!改めてよろしくね!)


彼(あっ藍乃!ふふ、藍乃がお姉ちゃんかぁ。ずっと一緒だね!)



彼方…….お前はどうしてそんなに可愛いんだ!!


(そうだね。だから今度こそ、頑張ろうね)


彼(うん、頑張ろう)




……というか、ずっと思ってたんだけど



(意思疎通出来るんだね。私たち)



彼(本当だ!気づかなかった!)


誰でも出来ることなのだろうか、それとも、神様のオプションのひとつなのかは分からないが、とてもありがたい能力だった。

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