星屑ビーナス
「あれ、あなた確かお昼の…」
「お、お疲れ様です…」
驚きと動揺で手元の書類を落としそうになりながらも、私は必死に手に力を込める。
「第二商品部の奥谷さん、でしたっけ。こんな時間まで大変ですね」
「い、いえそんな…そちらこそ、お疲れ様です」
にこ、と笑う顔はやはり可愛らしく、近くで見ても体も顔もすごく小さい。あまり化粧は濃くないのに、肌も綺麗だし睫毛も長いし、どこからかふわりと甘い匂いも漂ってくる。
(これが女の子の匂い…!)
「大阪から遥々大変ですね。今日はビジネスホテルですか?」
「えぇ。実家はこっちなんですけど、埼玉なので帰るのにはちょっと」
「あっ、私もです!地元埼玉!」
「あら奇遇ですね」
「でも大阪に転勤なんて大変ですね。あんまり実家帰れないんじゃないですか?」
「えぇ…けど、色々あって自分から出した異動願い出したので」
「へぇー…」
そういえば浅田さんも『元本社勤務』って言ってたっけ…あれ、もしかしてそれって真崎さんとの婚約破棄が原因してる?
(触れちゃいけない話題だったかな…)
話してからふと気付き、気まずくなってしまう。