星屑ビーナス



「真崎さん、髪乾かして服着ないと風邪ひきますよ」

「おー…」



気怠げにそう返事をして間も無く、後ろからはすー…と聞こえ出す小さな寝息。



(って、結局寝ちゃった)

振り向けば、ソファに横になる綺麗な寝顔の彼。



真崎さんは最近、会社あげての大きなプロジェクトチームの一員に選ばれ忙しい毎日を過ごしている。

朝早くに家を出て、昼間は自分の仕事とプロジェクトの仕事。夜は遅くまで残業…というのがここ一ヶ月のスケジュールで、日曜日も丸一日休めることはなく働き通しだ。



それでも毎日、どんなに遅くなっても家に帰ってきてくれる彼はやっぱり優しいと思う。…けど。

少しくらい結婚式のことも考えてくれてもいいんじゃないかなって思ってしまうのも、本音。



(忙しいのは分かってるんだけど…)

プロジェクトの時期と結婚式の準備時期が重なったのも運が悪かったけど、二人の結婚式なんだから私ひとりで考えても仕方ないことな気がする…。



「……」



けどすやすやと眠るその疲れた姿を見ると、あまりワガママも言えない。

今日もそれは変わらず何も話は出来ないまま、寝室から毛布を持ってきて細くも引き締まった彼の体にそっとかけた。





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